特定非営利活動法人(NPO法人)
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                          信 州 を つ く る

2003.5.14 日本経済新聞掲載

【顔が見える街創造】 

 「小さな子どもを勝手に遊ばせておいても安心なコミュニティーを作ろう」と呼びかける団体がある。2001年3月に発足した非営利組織(NPO)法人の信州まちづくり研究会(長野県立科町)だ。海外視察や啓蒙(けいもう)活動を展開している。 
 同研究会の設立代表人は安江高亮理事。建設業の三矢工業(立科町)社長を務めているが、「親が車で連れていかないと行けない所に公園を造っても意味がない」と郊外に児童が遊べる公園を造る自治体に持論をぶつけてきた。受注は請け負ってきたものの「無駄な公共事業だ」という疑問は消えなかった。
 整然と立ち並ぶ家の表側に車道を造る一方、裏側には車の通らない小道を造り、子どもや高齢者が自動車を気にせず歩けるようにしている。−−安江氏は1997年、本で知った米国カリフォルニア州デービス市の地域コミュニティー「ビレッジホームズ」を視察して感銘を受けた。
 コミュニティー内は車道も通り抜けできない構造で通行量も少ない。小道には果樹を植え、木陰には高齢者が休めるベンチがある。共同菜園や郵便箱をまとめて設置する場所もあり、安江氏は「住民が連帯感を持って生活していると」感じた。私有地と共有地を隔てる壁がなく隣家までの見通しがきき、「小道で草刈をしたり、ベンチで休む人がいるだけで泥棒は入りにくい」(安江氏)と防犯面でも感心した。
 視察をきっかけに安江氏は知人らに理想の街並みを説いて回り、研究会を立ち上げた。会には建設業や設計関係者、自治体など県内を中心に役130人・団体が参加する。大手紡績会社を退職し、出身地の佐久市に戻った大井富雄理事長は「高度成長の中で物流道路が生活道路を分断し、地域コミュニティーを破壊したが、子どもの教育にはコミュニティーの復活が必要」と指摘する。
 研究会の活動の中心は啓蒙。大井理事長は「生活空間と産業道路を混在させる昔ながらの都市政策から抜け出せない行政関係者にコミュニティー創造を訴えたい」と強調する。自治体の都市計画関係者や街づくりに関心のある一般の人を集め、年1回〜2回シンポジウムや講演会を開催。コミュニティーの考え方や活動内容を紹介するメールマガジンを月2回発行し、1000人以上に送っている。
 海外視察にも力をいれている。昨年5月には総勢13人でカリフォルニア州を訪問、「ビレッジホームズ」や、開発前から入居者が地域の運営方法を話し合う住宅地があるサクラメント市などを視察した。6月には15人前後で北欧の3都市に視察に出向く。
 国土交通省は今年度、「くらしのみちゾーン」(仮称)の実験に乗り出した。歩行者や自転車を優先し一般車両の進入を制限しようという事業で、実験地区としてこのゾーンを整備しようという市町村や市民団体などを16日まで募集中。補助金を交付し、今年度か来年度から施工する計画。大井理事長は国交省の動きを追い風に「一気に研究会の運動を広げたい」と意欲を見せている。                    (松本支局 黒沼勇史)

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